企業に必要な二つの基本的な機能

ドラッカー曰く、企業の目的は「顧客の創造」である。企業が有用な商品やサービスを提供することによって顧客が生まれ、そこに市場が形成される。

 

顧客がその商品やサービスを購入することによって、企業は経済的な資源を富(売上・利益)に変えることができる。

 

そこで言えるのは、顧客が買っていると考えるもの、価値と考えるものが重要であるということである。しかし、顧客のニーズも時とともに変化していく。

 

このように、時とともに変化する環境の中にあって企業の目的が「顧客の創造」であることから、企業には二つの基本的な機能が必要となる。その基本的機能がマーケティングとイノベーションである。

 

マーケティング

マーケティングは、企業の中心的な機能であり、その役割は「顧客の創造」そのもである。「顧客の創造」ということは、成果は企業の外にあるということを意味している。

 

マーケティングは、顧客の観点から見た全事業に関わる活動である。すなわち、企業内のそれぞれの組織において市場(顧客・非顧客)の代弁者の機能を持つことが求められる。

 

このように、マーケティングは販売よりはるかに大きな活動であり、企業のあらゆる組織に関わる活動である。それは、一部門の専門化された活動ではない。

 

例えばGEでは、顧客に対する訴求力を設計の段階から製品に組み込むべく、生産プロセスの最初の段階からマーケティング担当者を参画させるとともに、事業のあらゆる段階にマーケティングを組み入れている。マーケティングが、販売、流通、アフターサービスに加え、製品開発、生産日程、在庫管理においても主導的な役割を果たしている。

 

イノベーション

マーケティングだけでは企業は存続しえない。企業を取り巻く環境のすべてが時とともに変化している。企業は、変化・変転する経済において存在し続けなければならない。

 

従って、企業における二つ目の基本的機能がイノベーションである。すなわち、より優れ、より経済的な商品やサービスを創造することである。

 

商品やサービスだけではなく、生産プロセス、営業方法、流通プロセス、人事・組織運営など事業のあらゆる局面でイノベーションを図らなければならない。更にはマーケティングそのものもイノベーションしていかなければならない。

 

企業にとって、より大きなものに成長することは必ずしも必要ではないが、常により優れたものに成長する必要はある。そのためにもイノベーションが必要である。

 

この世は諸行無常、全てが変化・変転する。その中で、

  • 直ちに変化しなければならないもの
  • 近い将来変化させなければならないもの
  • その先に変化させなければならないもの

がある。それらを見極めて企業のイノベーションを図っていかなければならない。

マーケティングとイノベーションの関係

マーケティングとイノベーション
両者はいずれも経営の本質であり、両者は一体として機能するものである。

 

この二つの機能は、企業においては壁を破る力である。そして、マーケティングを経ないイノベーションはほとんど無価値である、というより危険ですらある。

 

イノベーションすると会社の資源を集約させるので、方向性を間違っていたら倒産する。このイノベーションの方向性を決めるのがマーケティングである。即ち、市場にピントを当てたイノベーションでなければならない。

 

ここで、経営者にとっての一番の敵は諸行無常の法則…変化変転の法則である。

 

諸行無常の法則に則って、お客様のニーズは変化する。世の中の仕組みやニーズも変化する。成功の定義やルールも変化する。好不況の波もこの変化変転の法則にしたがってやってくる。

 

マーケティングして、世間の流れ、潮の流れをつかむ、それを会社の変化として与えていくことがイノベーションである。だから永遠に壁を破り続けることができる。

 

この諸行無常の変化変転の法則を乗り切るために経営に取り入れる仕組みこそ、マーケティングとイノベーションである。

 

ご参考
本来のマーケティングとは「顧客の創造」
企業存続のためのイノベーション

 

現在、アメリカは中国の安い商品で満ち満ちている。メイドインチャイナ。50年前はメイドインジャパンだった。当時は日常消費、消費財で日本の商品に満ち溢れていた。その後日本は安かろう悪かろうではなく、経産省と経団連が一緒になって、日本を安価な消費型の経済から高付加価値型に変えた。これをリードしたのがソニーとトヨタだった。マーケティングをしてアメリカと世界が平和になっていくと、お金持ちが増え、高付加価値商品が増える。安かろう悪かろうという大量型から、世界トップの高付加価値型に持って行った。体系的廃棄をやり遂げた。これが無かったら、90年に中国が世界に行った段階で日本は沈没していた可能性が高かった。