サービスマインドによる顧客満足度向上

最近の企業では、「顧客満足度向上」を重要テーマに掲げている企業が多い。

 

この「顧客満足度向上」の鍵を握るものがこの「サービスマインド」ではないだろうか。

 

一般に「サービス」というと、奉仕、おまけ、値引きと捉えられている。

 

しかし、かの松下幸之助翁は、「サービスというものは、本来、相手を喜ばせるものであり、そしてまたこちらにも喜びが生まれてこなければならないものとし、そういう喜ばれ喜ぶ姿の中にこそ真のサービスがある」といっています。

 

どのようにしたら相手に喜ばれる仕事ができるのか?

 

それは、相手のニーズに応えるときの「心遣い」にあるのではないだろうか。

 

お客様や上司など他の人々のニーズに応えるということは、ある意味での「サービスマインド」である。真心を込めて仕事をする。他の人を気遣う心。

 

所謂、他の人のニーズに、知恵、技術、感性、ユーモア、遊び心などを真心を込めて提供する。この様に、真心を込めた仕事が相手に喜ばれ感動を与えるのではないだろうか。

 

顧客満足度向上の一つに「感動品質」が上げられるが、これもプロ意識と共に仕事一つひとつにお客様の喜ぶ顔を見たいという思いで真心をこめるところに重要なキーワードがあるのではないだろうか。

 

「感動品質」とは言えないが、顧客満足度ということで、私の体験した事例でいえば、20数年前、北海道のあるすし屋で車えびを頼んだら、板前さんがその頭を香ばしく焼いて「良かったらどうぞ」といって出しもらったことがある。今では、当たり前のサービスとなっているところが多いが、当時としては珍しかった。

 

この「お客さんに喜んでもらいたい」という気遣いが非常に嬉しかった。そして当然、すしも美味しかったが、海老の頭も香ばしくて美味かった。当然ながらお酒もすすんだ!!

 

 満足! 満足!

サービスマインド -ディズニーワールドの事例-

ディズニーワールドの1日の訪問者数は5万人から7万5千人で、そのほとんどが満足して帰って行くそうである。

 

その秘密は、どこにあるのか。

 

ディズニーは、「顧客満足度」という観点においてすべての企業がライバルであると認識している。すべての企業は何らかの顧客対応を行っており、業種に関係なく顧客によって比較されるということである。

 

その観点で、次のことを徹底している。

 

①細部に拘る
 お客様の目にするもの、手に触れるものすべてに細心の注意を払う。細部にこだわる例として、お城の建て方で、石を上にいくほど小さくなっている。これは実際よりお城が大きく見せるためである。様々なところにこの様な工夫があり、これを企業文化にまで徹底する。

 

②すべての人が語りかけ歩み寄る
 お客様(ゲスト)を助けるというのは文化として定着しており、顧客担当だけが苦情を処理するのではなく、全員が語りかけ歩み寄る。顧客と接する機会があれば、それはすべて価値を創造するチャンスと捉え、そのチャンスを生かせば競争に勝つし、チャンスを棒に振れば競争に負ける。この考えを定着させている。

 

③見えないところが大事
 歴代大統領の複製が展示されているが、その複製の服はすべて手縫いだそうである。それも当時のそのまま使っている。昔の大統領の服が手縫いかどうかなどゲストは気付きもしない。しかし、キャストは分かる。それが重要であると。

 

④すべてのものが語りかけ歩み寄る
 メリーゴーランドには23金が使われている。ペンキではなく金箔だそうである。③もそうであるが、ゲストのためならどんなことにも全力をあげ最善を尽くすということをキャスト(従業員)に分かってもらう一つの方法であるという。

 

そして、従業員には、報い、認め、讃えることを徹底している。これは、従業員の満足感と顧客の満足感とは切っても切れない関係にあると考えているからである。

 

この様に、顧客満足という観点で徹底し、企業文化にまで定着させているからこそ、リピータ率約70%を達成できているのだろう。

サービスマインド -スターバックスの事例-

スターバックスは、店舗を「第三の場所」と位置付けている。即ち、「自宅と仕事・学校などの間」にある「第三の場所」(サードプレイス)として、顧客が自分を見つめ直す場所であると位置づけている。

 

そのために、お店作りにもこだわりがある。お店によって違いはあるが、おひとりさまでもゆったり座れるソファ、勉強や仕事ができる大きな天板のデスク、その時間帯ならではの個性的な音楽、全面ガラス張りの窓から見える景色の言い眺め・・・など。

 

CEOのハワード・シュルツ氏は言う、「小売業というものは、細かいところが大切だ」(Ritail is detail)と。

 

そして、スターバックスの価値を支えているのは、そこに働く店舗スタッフということで、店舗スタッフ(従業員)のことを「パートナー」と呼んでいる。

 

パートナーは、来店したお客様の一挙手一投足を見ながらその心理を洞察し、的確で質の高い接客トークと効率的な店舗業務をこなす。

 

スターバックスでは、「全員がバリスタでなければならない」といった基本的な考え方があり、

  • スターバックスとは何なのか
  • 私たちは何のためにここにいるのか
  • そして何を考え、何を人々に伝えようとしているのか

といった店舗を経営するうえでの「価値観」が明確に打ち出され、そして全員に共有されているという。

 

スターバックスには、硬直した「接客マニュアル」はない。
例えば、目の前にいるお客様とは関係ない「いらっしゃいませ~」「ありがとうございました~」「○○をお願いしま~す」「かしこまりました~」など。

 

スターバックスのパートナーは、常に一人ひとりを見つめ、興味を持ち、想像力を働かせて接客をする。だからお客の側でもこれに応える…そこには、失われた本当の人間関係の姿をう伺わせる。

 

ケース1 急いでいるお客様には
「紙のカップをご用意したほうがよろしいですよね。お持ち帰り用の袋に入れましょうか?」…持ち帰りでいいかどうかを確認している。

 

ケース2 迷っているお客様には
「何かお気になるもの、ございましたか?」…お客様の心境に即した言葉を掛けている。

 

このように、お客様を「観察する」ことで想像する。そして、自分の頭で考えて言葉にするから自然な言葉に繋がるのだ。

 

スターバックスの経営理念「OUR STARBUCKS MISSION」では、一番目に「コーヒーの品質」、二番目に「パートナー(働く仲間)の大切さ」が挙げられており、三番目に「お客様の大切さ」が挙げられている。

 

これは、「お客様に最高のホスピタリティを提供するためには、まず仲間同士が自分たちを大切にしあい、ホスピタリティ溢れる関係にならなければ、お客様にホスピタリティある接客やサービスなどできるはずがない」という考え方が根底にある。

 

「自分たちが大切にされている」という実感がなければ、「お客様を大切にしよう」とは思えない、これが実は、小売り・サービス業労働の本質である。